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「福岡県下の結果による2024年総選挙」

出水薫さん(九大・政治学)レジュメあり

1)福岡県下の結果

全11選挙区で候補数が過去最多(=候補乱立)

自民の議席数減少継続

2014年自民11:野党3→2017年11:4→2021年8:5→2024年8:7

全11選挙区で自民の得票減 とくに3区-9.22p、4区-8.70p、6区-9.51p

5区・11区を除いて9選挙区で前回より投票率が下がる(自公の組織票が動員できなかったか?)→投票率が下がれば与党有利とは単純に言えない

野党共闘の変容 

国民候補+立憲非擁立(4区・6区)

社民候補+共産非擁立(4区・11区)

旧来の共闘を維持(5区 立憲候補の比例復活の寄与)

維新の後退

過去最多の9選挙区で候補擁立

前回対比で得票減 1区-0.51p、2区-2.55p、4区-1.29p、10区-2.59p

比例九州ブロックも1議席のみ

2)特徴的選挙区

4区 現職宮内(不記載問題で公認のみ・重複なし、二階派、自民県議団と対立)

連合福岡が仲介 国民候補(立憲非擁立)

⇒現職宮内が5選、国民・維新が比例復活で3人当選

9・10区

     2019年県知事選 麻生vs反麻生○

2021年自民現職2人が落選・引退(支部長空白)

2023年北九州市長選 武内当選(麻生が間接支援、造反2市議も支援)

9区 造反市議が立候補、麻生が大家断念の説得⇒無所属緒方氏が当選

10区 造反市議が立候補、別の県議も立候補(自民分裂)⇒立憲城井氏が当選

3)むすびに

与野党逆転になるためには、7月参院選の帰趨が影響⇒自民への逆風を一過性にしない⇒自公と国民・維新が一緒にならないような争点が大切

福岡県下の自民党内の力学が、武田落選、麻生「最後の選挙戦」「世襲」で変動か?

維新が後退

減税指向2党(国民・れいわ)への支持漸増

提起したい争点

①物価高騰で生活困窮⇒生活必需品の消費税は減税、富裕層への増税(所得税の税率を上げる、金融課税を行うなど)をセットで主張することで、減税2党との差別化を。

企業・団体献金の廃止 自民以外は反対。自公の間にクサビを入れる。

大学など教育無償化

選択的夫婦別姓の実施 自民保守層と参政党などが反対

(質疑応答)

質:福岡2区・鬼木氏落選について、どのように分析されていますか?

答:候補乱立も影響したかもしれないが、自民への逆風のもと自民が自滅(-5.41p)

質:福岡2区では、上位1位・2位と3位以下の差が大きかった。どうしてそうなるのか? 鬼木氏が比例復活したがなぜか?

答:前提は現在の選挙制度が関係している。1994年に中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へ変更。小選挙区制は、候補者数が当選者+1に近づく傾向が強まり、2大勢力化を進展させる。小政党が生き延びる余地を残すために比例代表とセットにしたが、政党所属の候補の比例重複を認めたために、落選しても惜敗率が高いと比例復活する。問題点もある。福岡県には11選挙区しかないが、比例復活・福岡県所属が4人いるため、計15人の衆議院議員がいる。隣県の佐賀県の場合、2選挙区しかないが、落選した2人も比例復活しているので計4人の衆議院議員がいる。「一票の格差」問題が言われるが、福岡県も佐賀県も有権者は得をしていると言える。

質:比例票を獲得したいために野党が共闘しない。野党共闘を妨げるために比例代表制があるように思える。

質:比例代表制を並立させたのは小政党救済のため。比例重複を認めていることが問題なのではないか。パリテを適用し、比例上位に女性候補の名前を並べるなどの使い方をすべきではないか。

答:2大政党制をめざすとしながら実態はそうはならないなど、制度の問題は明らか。選挙制度変更の議論をすべき。

質:現在の制度だと無所属候補には不利になっている。例えば、供託金大(衆議院・選挙区の場合300万円)、無所属だと政見放送ができないなどの問題がある。

答:日本では有権者は6種類の選挙に関わっている。国政の衆・参、地方の知事・市町村長、地方の都道府県議・市町村議。サイズが異なると選挙制度も違う。無所属候補が望ましいかどうかを含めて考えるべき。衆議院の場合、当選するには少なくとも5万票が必要。はたして無所属で獲得できる票数か疑問。また、政党は、税金からの交付金、政党法など

で規定される公的存在である。国政における無所属とは?を考えるべきではないか。

質:国民が「103万円の壁」「手取りを増やせ」で得票数を伸ばした。自民は得票を減らしたが、本質的な自滅ではなく、政権として存続することになった。生活が厳しく所得が減るなかで、米国の最低賃金を15ドルに!といった具体的な目標を明示することが大切なのは分かるが、護憲・平和は票にならないと言われる。何とか、結びつけることはできないのか?

答:自民に対しては今回は「おきゅうをすえる」有権者が多かった。自民は1955年以来約70年間ほぼ与党である。自民党による政治そのものを問題視するようにはなってない。また、「安全保障」は必要だとということが市民権を得ている。そのもとで平和の問題を考えるには、昨年5月3日の講演で話した、憲法前文の「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」をもとに、平和と生存の関係から語ることが必要なのではないか。

※本日の話は、法律文化社から6月に刊行される本に掲載予定とのことでした。

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